■LX100Systemストレージシステムによる実証例
1.インターネット用のストレージに対応するストレージ
図1に新シテムのアーキテクチャを示す。左側はRAIDで右側は新シテムを実現するLX100Systemストレージシステムである。 |
【図1】従来RAIDシステムと新システムのアーキテクチャ |
NodeはHDD自身や記憶媒体に直接IPのインタフェースが内蔵されているのが理想であるが、現実には無理である。そのため、実存する技術をベースに必要な機能を実現したものがNodeの概念であり、それを商品化したのがLX100Systemである。その設計思想は以下の通りである。
@Nodeはストレージに必要な機能を総て盛込む
A制御装置はNode内の制御に充分な性能(小型、低消費電力)でよい
BNode自身は消費電力を最少にすべく開発。未使用のNodeはスリープ状態
CNodeをネットワーク上に分散し全体で信頼性と絶対性能を得る
DNodeは機能が同じなら異なる機種でも良い
E障害時は障害が発生したNodeのみを切り離す事で解決
F規模が大きくなればなる程、信頼性と全体の性能が増加
上記の仕組みにより、LX100Systemは保存するデータを複数のNode配下のHDDに分散保存することができ、ハードウェア障害などによるデータ滅失を防止する。また、インターネットで用いられている仕組みをストレージシステムに応用することにより、HDD容量の容易な拡縮を可能にし、Nodeの接続台数や設置場所といった係数を増やすことで冗長性のある仕組みを実現する。これらのことと、8〜12TBの容量を実装しても、40Wという僅かな電力での稼働を同時に実現した。同容量を実装した一般的なストレージの消費電力が400〜500Wであるのと比べて、約1/10の消費電力を実現した。
表4にLX100Systemの仕様と下記の図に本体外観を示す。19インチラック(40U)の両面に搭載が可能な1Uハーフサイズを採用しているため、1ラック当たり640TB〜1.28PBの容量を実装しても、消費電力3.2kWである。すなわち、ペタバイトクラスのストレージシステムを1ラック当たり4kVAの供給電力で運用可能である。データセンタ事業者にとってはスペースの有効活用が図れ、利用者は運用コストの削減が期待できる。 |
【表4】LX100Systemの仕様[2]
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【図2】LX100Systemの外観[2]
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例えば、LX100Systemで1PBのストレージシステムを1年間(356日、24時間)運用した場合の消費電力量は約3万kWhになる。そこで、一般のストレージシステムを10倍とすると約27万kWhの削減ができる。また、データセンタの電気代を1kWh当たり20円とした時に、540万円の削減が可能となる。他にもラック本数の削減分を考慮すると、データセンタの運用コストとしては1千万円近い削減も見えてくる。 |
2.バックアップが不要な仕組み
大規模に成れば成るほど、バックアップは困難になる。単純な例としてインターネット全体のバックアップは人類には不可能である。そこで、LX100SystemをスカパーJSAT株式会社が提供するクラウド・ストレージサービス『S*Plex3』と組み合わせることで、理想的なクラウド・ストレージシステムを実現可能である。S*Plex3では、図3に示すようにファイルを符号化・断片化して7ヶ所以上のデータセンタに広域分散保管を行う。オリジナルのデータがそのままの形では存在しなく、仮に断片化されたファイルをコピーされて情報が漏れたとしても、それだけでは復元をすることができない。S*Plex3はクラウドサービスでは国内初のコモンクライテリア認証(ISO/IEC 15408)を取得しており、個人情報もクラウド・ストレージサービスに登録する事が可能である。 |
【図3】ファイルの符号化・断片化と広域分散保管の流れ
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映像協力:スカパーJSAT株式会社様
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また、分散保管したデータの約30%のデータを損失してもオリジナルデータの復元が可能である。そのため、広域分散保管した数ヶ所のデータセンタが甚大な災害を受けても、他のデータセンタに残っているデータからリアルタイムに復元ができるため、継続した運用が可能になる。このことから、ディザスタリカバリーシステムの構築やバックアップ作業が不要になり、大幅なシステム運用・維持コストの削減を図れる。さらに、ハードウェアの耐久年数による3〜5年ごとの大規模なデータ移行作業が不要になり、ハードウェアメーカや機種を問わないため、製品サイクルによる制約を受けない。そのため、その時点で利用可能な最もビットコストの安い記録メディアを自由に選択でき、データ保管にかかるコストを抑えることが可能になる。
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